ソフトテニス世界一を決める戦いも、いよいよ最終章。
大会最終日となる5日目は、国別対抗団体戦の準決勝から。
世界選手権金メダルの栄光を掴むための最後の戦いが始まります。
第1シードとして、韓国、台湾と反対のヤマに入った日本男子チーム。
センターコートで行われた第1試合では、決勝進出を賭けてタイ代表との対戦。
注目のオーダーは、1番ダブルスに船水颯人/中本圭哉ペア、2番シングルスに長江光一選手。
そして3番には丸中大明/鈴木琢巳ペアが控えます。
決勝までを見据えたの対戦国との駆け引きや、あとの試合に備えた温存などいろいろな見方ができますが、ここまで日本代表は登録選手6人のなかから毎試合ごとにオーダーを変更しています。
前日はシングルス起用だった船水颯人選手を、この準決勝では中本圭哉選手とのダブルスに回します。
9月の全日本社会人でも実現したドリームペアが、ここ世界選手権の舞台でも実現。
過去記事:令和元年度 全日本社会人ソフトテニス選手権大会(観戦編)
船水颯人選手は今年、天皇杯、全日本社会人に加え、さらには全日本シングルスも制しています。
言わずと知れたマルチプレイヤーで、シングルス、ダブルスどちらでも日本代表のエース格。
中本圭哉選手も普段はダブルフォワードの平行陣ですが、さすがの名前衛は船水選手との雁行陣でも息ピッタリ。
参考までに付け加えると、中本選手も全日本シングルス優勝経験があり、なんならシングラーまで務めることもできます。
こうしたマルチな選手たちの存在が、日本代表チームにとって団体戦オーダーの幅を広げてくれています。
抜群の安定感で、まずは船水・中本ペアが先勝。
つづく2番シングルス。
こちらもシングルス巧者の長江光一選手。
全日本シグルスでもこれまでに優勝3回。
盤石のリレーで、タイを寄せ付けず早々に決勝進出を決めます。
悲願の国別対抗金メダルまであと一つ。
決戦のときが近づきます。
一方、男子と同時にスタートした女子チームも好発進。
準決勝の中国戦では、1番に出た高橋乃綾・半谷美咲ペアが⑤-0のストレートで快勝。
つづく2番シングルスの尾上胡桃選手も、④-1で危なげない勝利。
良い流れで決勝戦を迎えます。
決勝戦の相手国を決めるもう一つ準決勝は、男女それぞれが台湾対韓国の顔合わせに。
女子は前回団体金の韓国が、台湾を抑えて決勝へ。
今回の韓国女子チームは個人戦ではダブルスで日本に、シングルスでは中国に金メダルを阻まれただけに、国別対抗での連覇は譲れないところ。
4年前にインドで開催された世界選手権。
男子では、個人戦全種目で金メダルを獲得した韓国チームを、準決勝で台湾チームが撃破するという一幕がありました。
そのときは、その台湾との決勝を制した日本が団体金メダルを獲得。
今回はダブルス金メダルのユー・カイウェン/リ・ウェイジェのペアを軸に再び国別対抗決で勝進出を狙った台湾チームでしたが、ここではベテラン勢の経験が勝る韓国チームが勝利。
舞台は整い、いよいよ頂上決戦。
決勝は男女とも日韓対決に。
韓国の1番、ムンヘギョン、コ・ウンジのペアに対して、日本のトップを務めるのは高橋・半谷ペア。
前日のダブルス準決勝でも高橋・半谷が1で勝利しています。
個人戦優勝の勢いそのままに、ライバル韓国を圧倒。
終始リードを保った高橋・半谷ペアが1で快勝。
いよいよ団体金メダルに王手をかけます。
つづく2番シングルスは、尾上胡桃選手。
対戦相手は、個人戦で破れたソン・ジヨン選手です。
一球一球に気持ちの込もったボールで、次第に尾上選手がジヨン選手を押していきます。
昨年のアジア競技大会の国別対抗決勝、日韓戦。
最後は日本女子チームの劇的な優勝で幕を閉じましたが、そのとき2番シングルスで韓国選手に完敗だった尾上選手としては、今回は是が非でも自分の手で金メダルを決めたいところ。
その気迫が観客席にもひしひしと伝わってきます。
手強い相手にも終始攻めの姿勢を崩さなかった尾上選手。
そして訪れる歓喜の瞬間。
今回は個人戦の結果からも、総合力では韓国、台湾と比べても日本が頭一つ抜けているように見えました。
団体決勝も日本の強さが際立った試合展開で、見ていて安心感がありました。
とはいえ世界選手権の決勝という大きな舞台で、勝つことを期待されている日本代表選手たちにのしかかるプレッシャーは相当なはず。
その重圧を跳ね除けての金メダル。
見事でした!
女子国別対抗優勝おめでとう!!
そんな嬉しい嬉しい勝利のあと、間髪入れず次なる戦いが。
男子決勝戦、日韓対決。
試合を終えたばかりの女子選手たちも、スタンドで固唾を呑んで見守ります。
多くの人の期待を背負って、日本代表が最後の戦いに挑みます。
気になるオーダーは、1番ダブルスに船水・中本ペア。
この日韓戦を迎えるにあたり、『団体戦シングルスで船水颯人選手とキム・ジヌン選手との四度目の対決なるか』というところが、一つの大きな注目ポイントでした。
「次こそは」というファンの期待、そして何より船水選手本人の打倒ジヌンに対する気持ち。
いろいろと思いを巡らせれば、この舞台で「四度目の正直」というドラマが見たかったのも事実。
しかしそこはあくまでチームで戦う団体戦。
船水選手をダブルスに起用して、一本取りにいくのも納得のオーダーです。
打倒韓国、そして悲願の金メダル獲得に向けて、この選択が吉と出るか凶と出るか。
あとはコート上で戦う選手たちを信じるのみ。
韓国の1番には、個人戦ダブルスでも銅メダルを獲得したイ・スヨルとキム・ジュンユンのペア。
イ・スヨルは4年前の個人戦ダブルスでも金メダルを獲得した実績ある選手です。
国際大会でその強さを発揮してきた実力ペアを相手に、序盤ゲームカウント1-3とリードを許す苦しい展開。
相手も元世界チャンピオンだけに、簡単には点を取らせてもらえません。
しかし、ここで負けるわけにはいかない日本のエース。
イ・スヨルが4年前の元世界チャンピオンなら、日本の中本圭哉選手も8年前の元世界チャンピオン。
その中本選手が、ダブルフォワード主体でプレッシャーをかけてくる難敵を相手に、要所で仕掛けます。
勝負どころの点が欲しい場面できっちり仕事をするさまは、まさに前衛の鏡。
さすがベテラン、頼りになる!
アニキと呼ばせていただきます!!
日本が誇る絶対的エースの船水颯人プロと、頼れる中本アニキの活躍により、第1対戦を見事日本が先取!
大きな大きな1勝により、日本が金メダルを手繰り寄せます。
そして入った第2対戦シングルス。
日本の前に立ちはだかるのはこの男。
鉄壁のシングラー、キム・ジヌン。
内本選手も、果敢に攻め、走り、拾いますが、突破の糸口は掴めず0-④のストレートで敗退。
ジヌンの壁はやはり厚く、韓国が1本取り返して勝負の行方は3番勝負へ。
日本の3番を務めるのは、男子代表キャプテンの長江光一選手と、今回代表に追加招集された鈴木琢巳選手。
国内の大会ではもちろんのこと、この世界選手権を通じても初のペアリングです。
船水・中本を組ませてダブルス起用した時点で、もう1本のダブルスは丸中・長江と考えるのが自然でした。
しかし、長江選手の正ペアである丸中大明選手は、大会期間中に足を捻挫したそうでベストコンディションではないらしく、予想外のペアリングに。
丸中選手の代役が、その高校、大学時代のペアである鈴木選手となったのは、なんという展開でしょう。
いろいろな想いが交錯します。
互いに普段からダブルフォワードの長江選手と鈴木選手。
そうは言っても、この大一番にいきなりペアを組んでどれだけのパフォーマンスを発揮できるかは未知数。
相手も百戦練磨の韓国ペア。
パク・キュチョル選手は4年前のダブルスチャンピオン(イ・スヨル/)
今回もこのイ・ヒョンス選手とのペアでダブルス銀メダル。
ミックスダブルスではムン・ヘギョンとのペアで金メダルも獲得しています。
互いに譲らず一進一退の攻防。
スタンドからの応援も、声を枯らして選手たちの背中を押します。
普段はあまり感情を表に出さず、飄々とプレーする印象の強かった鈴木選手。
この日は気合い十分。
持ち前の繊細なネットプレーと豪快なスマッシュを繰り出し、コートに力強いガッツポーズと雄叫びが響きます。
そしてゲームカウント4-3からの8ゲーム目。
いよいよ待ち望んだ瞬間が訪れます。
個人戦の厳しい結果からすれば、この道のりは決して平坦ではなかったはず。
それでもチーム全員の力で掴み取った世界一。
強敵韓国を相手に、ソフトテニス発祥国ニッポンの侍たちがその意地を見せてくれました!
すごいぞニッポン!!
おめでとう!!
そして感動をありがとう!!
過去の国際大会の歴史を紐解けば、決してハッピーエンドばかりでなく、厳しい戦いのなかで無残な敗戦や苦汁をなめる結果もあったはず。
そうしたなか、男女で世界一という最高のフィナーレで幕を閉じた今回の世界選手権。
こんな夢のような場面に立ち会えたことを大変嬉しく、そして光栄に思います。
ここで栄冠を手にした選手たちも。
残念ながらこの場に立てなかった選手たちも。
感動の余韻に浸る間もなく、次の戦いへ向けて選手たちはまたすぐに動き出すはず。
国内での熾烈な代表争いが盛り上がってこそ、また日本が国際舞台で活躍する可能性が広がります。
まだ見ぬ未来の日本代表たちにも、わずかながらでもこの熱が届いてくれたら幸いです。
来年はタイのチェンマイでのアジア選手権。
あの千葉での熱戦からもうすぐ4年経つとは・・・。
次なる舞台に、今から胸が高鳴ります。
過去記事:第16回 世界選手権(4日目)
過去記事:第16回 世界選手権(3日目)
過去記事:第16回 世界選手権(2日目)
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