宿命のライバル対決、日韓戦。
ソフトテニスにおけるいわゆる4大国際大会のなかにおいて、もっとも権威のある大会といえるこのアジア競技大会。
その決勝戦という最高の舞台で、両雄が激突します。
ソフトテニス発祥の国とはいえ、日本代表が過去にこのアジア競技大会の団体戦で金メダルを取ったのは、男女ともにたった1度きりです。
アジア競技大会国別対抗 歴代優勝国(金メダル)
開催年 | 開催地 | 男子優勝 | 女子優勝 |
---|---|---|---|
1994年 | 広島 | 台湾 | 韓国 |
1998年 | バンコク | 韓国 | 韓国 |
2002年 | 釜山 | 韓国 | 韓国 |
2006年 | ドーハ | 日本 | 韓国 |
2010年 | 広州 | 台湾 | 日本 |
2014年 | 仁川 | 韓国 | 韓国 |
こうしてみると、国際大会における韓国の強さは圧倒的です。
その牙城を切り崩すことができるか、我らがニッポンチーム。
その注目の男子決勝戦、第1対戦。
先陣を切るのは、今回の代表メンバーのなかではもっとも国際大会の経験が豊富で男子キャプテンも務める長江光一選手と、その所属チームであるNTT西日本でもペアを組む代表初選出の丸中大明選手。
相手は韓国のエースペア。
名実ともに現役世界最強ペアと言って間違いない、キム・ドンフン/キム・ボムジュンです。
両チームの大黒柱同士の対決。
互いにダブルフォワードを主体としつつも、状況に合わせて目まぐるしく陣形が入れ替わるスピーディーな試合展開。
ゲームカウント2オールまでは一進一退の攻防が続きますが、そこから徐々に流れは韓国ペースに。
やはり王者韓国チームの壁は高く、最後は⑤-2でドンフン/ボムジュンペアが勝利。
続く2番シングルス対戦は、船水颯人選手が登場。
個人戦シングルスの予選リーグで苦杯を喫したキム・ジヌン選手と再戦です。
団体戦決勝でのリベンジマッチに、私を含めた観客の誰もが祈るような気持ちで試合に食い入ります。
スタンドで声を枯らす日本の応援団のなかには、4月の日本代表選手予選会で惜しくも颯人選手に敗れた兄の船水雄太選手の姿も。
チームメイトや代表関係者、選手のご家族まで、さまざまな立場の人が一体となって必死の大声援を送り、コート上の選手を後押しします。
個人戦では、粘るキム・ジヌン選手に対して先に勝負を仕掛けたことが裏目に出て、まさかのストレート負けだった船水選手。
今回の対戦では戦法をガラリと変え、ロングラリーでどこまでも耐えながら、焦れた相手が仕掛けてきたところをカウンターに出る作戦と見えます。
長期戦に持ち込む作戦が奏功し、個人戦のときとは打って変わって一進一退の大接戦に。
6ゲーム目に入った時点ですでに試合時間は1時間を超え、お互いに我慢の時間が続きます。
徹底した消耗戦になるなか、均衡を破ったのはジヌン選手。
今大会個人戦シングルスでも金メダルに輝いた名手は、巧みにコースを打ち分けながら船水選手に揺さぶりをかけます。
さすがの船水選手も、準決勝台湾戦でのファイナルの疲労蓄積もあってか、足へのダメージが限界を迎えて二度のタイムを取ります。
死力を尽くしたその戦いは、最後は韓国側に軍配が。
試合が終了した途端、緊張と重圧から解放されたのか一歩も動けなくなった勝利した側の韓国選手の姿が、その死闘を物語っています。
コート上の2人が限界を超えて戦い抜いた名勝負に、悔しさ半分。
残りの半分は両選手の健闘を讃え、勝敗を通り越してただただ「お疲れさま」と言いたい気持ちです。
王者韓国を追い詰め、金メダルに肉薄するも惜しくも準優勝。
それでも殊勲の銀メダルです。
図らずも、男子チームの弔い合戦となった女子決勝戦。
個人戦での活躍や、頼もしいメンバーたちの表情をみれば、彼女たちならきっとやってくれると思えてくるので不思議です。
第1対戦は、高橋乃綾/半谷美咲ペアと、ムン・ヘギョン/ペク・ソルペア。
混戦の男子と比べても、とりわけ強さが際立っている韓国女子チーム。
後衛の打球力、前衛のポイント力の高さ。
随所に圧巻のプレーを繰り出します。
それでも昨シーズンは国内インドア大会で無敵を誇ってきた高橋・半谷ペア。
ハードコートのサーフェイスへの適応力も高く、ダブルフォワード主体のプレースタイルも噛み合って、韓国ペアに食らいつきます。
ファイナルでも3本あった相手のマッチポイントをしのいで、見事な逆転勝利!
紙一重の試合を勝ちきり、大一番をものにします。
続く2番シングルス対戦では決勝進出の立役者、尾上胡桃選手が登場。
押せ押せムードでこのままいくかと思われましたが、相手はさすが世界選手権シングルスチャンプ。
きっちりと勝利し、3番勝負へつなぎます。
日韓戦の勝利を託されたのは、代表キャプテンの黑木瑠璃華選手と、予選会優勝の林田リコ選手。
ここまできたら、あとは気持ちの勝負です。
韓国代表のお株を奪うような林田選手の豪打と、黑木選手の強気のポジション取りがうまく噛み合い、試合が進むにつれて日本ペースに。
最後は、狙い澄ました林田選手のノータッチサービスエースで、誰もが待ち望んだ歓喜の瞬間が訪れます。
嬉しい嬉しい、2大会ぶり2度目の団体金メダル。
コートで戦った選手たち、サポートのチームスタッフ、日本から現地まで駆けつけた応援団。
そして、日本から魂を送ってくれた多くのソフトテニスファンの方々。
オールジャパンで掴み取った、誇らしい金メダルです。
5日間に渡る激闘の日々。
その感動のすべてをお伝えするには、私の文章力や写真だけではあまりにも及びません。
でもこの感動は、どんなに大げさに表現しても大げさすぎることはないくらい、それを目にした私たちの胸に深く刻み込まれました。
このソフトテニス競技の素晴らしさを、選手あるいは指導者として競技に関わっている方々、その周りで支えている方々、そして未来の日本代表を目指す子供たちに、語り部としてしっかりと受け継いでいきたい。
改めて強くそう思ったアジア競技大会でした!
女子団体金メダル、本当におめでとうございます!
まさかこんな大団円を迎えるとは。
ドラマかっ!!
私の主観は存分に盛り込まれているかもしれませんが、今大会に関する情報はもちろんノンフィクションですよ。
いやー、スポーツって本当に筋書きのないドラマですね。
これだからソフトテニスを見るのもやるのも、まだまだやめられません。
これからも、頑張れ、ニッポン!!
2018アジア競技大会ソフトテニス競技 注目動画
男子国別対抗/決勝(第2対戦)
キム・ジヌン(KOR)対 船水颯人(JPN)
女子国別対抗/決勝(第3対戦)
キム・ヨンヘ/ユウ・イエスル(KOR)対 林田リコ/黑木瑠璃華(JPN)
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過去記事:第18回アジア競技大会(国別対抗-前編)
過去記事:第18回アジア競技大会(ミックスダブルス編)
過去記事:第18回アジア競技大会(シングルス編)
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