4年に一度行われるアジア最大のスポーツの祭典、アジア競技大会。
ソフトテニス競技は1994年の広島大会から正式種目として採用されています。
ソフトテニスの国際大会にはヨーロッパや南米などのチームも参加する世界選手権もありますが、アジアオリンピック評議会(OCA)が主催するミニオリンピックともいえるこのアジア大会のほうが権威はより高いです。
ソフトテニスのような非オリンピック種目も含めた全40競技が、8月18日〜9月2日の16日間にわたってインドネシアの首都ジャカルタとスマトラ島南部の都市パレンバンの各会場に分かれて開催されました。
ここパレンバン会場のジャカバリンスポーツシティは、広大な敷地のなかにスタジアムや体育館、テニスコートなど各競技用の施設を備えています。
会場内は無料バスで移動することができます。
会場に着くやいなや、ソフトテニス・オンラインのぉまみさんから日本応援団に特製うちわが配られ、俄然テンションが上がります。
私も海外で国際大会を観戦するのはこれが初めてですが、これから繰り広げられる熱戦を想像しては期待に胸が膨らみます。
大会初日は男女シングルスの予選リーグ。
日本からは船水颯人、長江光一、尾上胡桃、高橋乃綾の4選手がエントリーし、それぞれベスト8をかけて戦います。
センターコートを含めた全14面に、順次日本代表選手の試合が入ります。
そのどれもが注目の試合ばかりで、とても体が一つでは足りません。
日本チームの試合を偵察をする韓国選手。
国際大会の舞台で長年ライバルとしてしのぎを削ってきた韓国・台湾・日本の3強を軸として、それを追いかける他国の選手たちのレベルも年々上がっているようです。
2年前に千葉で開催されたアジア選手権で見覚えのある選手もちらほら。
初日は危なげなく予選通過かと思われた日本代表の精鋭たち。
しかし、予選リーグから国際大会の洗礼を受ける衝撃的な試合がありました。
シングルスで争われた4月の日本代表予選会、そして5月の全日本シングルスでも優勝した日本の絶対的エース、船水颯人選手。
その船水選手が、予選同組の韓国キム・ジヌン選手に序盤からリードを許します。
巧みなフットワークによるコートカバーの広さと、前後左右に自在に打ち分けるスライスショット。
2015年の世界選手権シングルスも制したキム・ジヌン選手の巧みなテニスは健在です。
船水選手は果敢に仕掛けるも、惜しいミスが続いて一方的な展開に。
あっという間にゲームカウント0-3。
万事休すかと思われたところに、突然の激しいスコールで試合は一時中断。
ハードコートでは、雨が止んでもコート上が完全に乾くまで再開はしないため、1時間以上の長い中断を挟むことに。
これが恵みの雨となり、流れを引き寄せることができるか。
結局、再開後もそのままゲームを支配され、まさかのストレート負け。
どんなにリードされた状況でも、船水選手なら必ず挽回してくれるという淡い期待も打ち砕かれます。
これが国際大会の厳しさです。
その後も断続的な降雨を挟んだため、次の試合は日が暮れかけてからナイター照明のなかスタート。
リーグ抜けをかけて長江光一選手と台湾選手の対戦が入ります。
船水敗戦の嫌なムードを断ち切るかのように、序盤から3ゲームを先取。
このまま無事に予選全勝でベスト8進出かと思われましたが、台湾代表の陳郁勲選手が粘りを見せ、ファイナルに追いつきます。
弱冠17歳の陳選手による変幻自在なショットが決まりだし、嫌な予感がよぎります。
代表経験も豊富で今回男子キャプテンを務める長江選手。
並々ならぬ気迫のこもったプレーで、決まったかと思われるボールを執念で拾いまくります。
まさに意地と執念の勝利。
これが国際大会の迫力かと、初日から度肝を抜かれました。
なかでも大会実績で上をいく韓国、台湾との対戦では、簡単に勝てる試合など一つもないと痛感しました。
激戦を制した長江選手に加え、女子の高橋乃綾選手、尾上胡桃選手も無事に予選リーグ全勝で2日目へ。
大会2日目は、シングルスの決勝トーナメントとミックスダブルスの予選リーグです。
この日は朝から好天に恵まれ、気持ちの良い青空が広がります。
とはいえ、熱帯性気候のインドネシアは高温多湿で、観戦しているだけでも汗がだらだらと出てとにかく喉が乾きます。
選手たちにとっても過酷なコンディションといえます。
ソフトテニスは、新興国ではまだまだ競技人口も少ないマイナースポーツであることがほとんどです。
それでもアジア大会という注目度の高さから、各国メディアが代表選手たちを取材しています。
今大会では個人戦シングルスについてのみ、いわゆる「思いやりドロー」や「フレンドリーゾーン」と呼ばれる施策が導入されているため、トーナメントにおいて日韓台の強豪国を片側に集中させることで、反対側の山ではそれ以外の国にもメダル獲得のチャンスが生まれます。
メダルを獲得すれば注目が集まり、競技の普及発展にも寄与します。
男女ともベスト8から始まるシングルス決勝トーナメントは、いきなりメダルをかけた戦いからスタート。
代表選手たちの所属チーム関係者、ご家族、そして日本各地から駆けつけた熱心なファンたちによるスタンドからの応援にも熱がこもります。
朝の第1試合では、前日の予選リーグで見事韓国選手を破って勝ち上がった尾上胡桃選手が台湾のエース鄭竹玲選手とメダルをかけて激突。
2010、2014、2018と3大会連続で出場を果たしており、過去にミックスダブルスで銀メダルも獲得している試合巧者の鄭選手。
対する尾上選手も今年の全日本シングルスで優勝し、シングラーとしての才能を開花させています。
持ち前のハツラツとしたプレーで健闘するも、鄭選手の安定したプレーの前に0-④で敗退。
一方、その隣のコートで同時にスタートした男子シングルス注目の対戦。
前日の厳しい試合を競り勝った長江選手と、これまで国際大会でも数々のタイトルを取得し世界No.1プレイヤーの呼び声高い韓国のキム・ドンフン選手の一戦。
力強さと精密さを兼ね備えたドンフンの前に、必死で食い下がるもストレートで敗退。
この時点で、今大会における男子日本代表のシングルスでのメダル獲得の望みは途絶えます。
長江選手もフィジカルコンディションが万全ではなかったようですが、日本選手全体としてハードコートへの対策という面で、韓国や台湾に後塵を拝している感は否めません。
男子シングルス決勝は、韓国とインドネシアの対戦に。
韓国は予選リーグで船水選手を0で退け、準決勝ではドンフンとの同士討ちに勝ったキム・ジヌン選手。
そして反対の山からは、2016年のアジア選手権シングルスでも決勝進出して内本隆文選手との激闘を演じた、インドネシアのエルバート・スィー選手。
硬式テニスから転向した選手ですが、国別対抗戦デビス杯にも出場経験のある実力者です。
強豪韓国選手を相手に一方的な試合になるかと思えば、今回の決勝戦でも大接戦を繰り広げました。
このエルバート選手に限らず、他の出場国でも硬式テニス出身のプレイヤーは少なくありません。
ソフトテニスがまだ普及していない新興国では、硬式テニスからソフトテニスへ転向という流れも競技発展のために有力な手段だと感じます。
こうした選手たちの活躍を見ていると、国際大会の舞台で日韓台の牙城を切り崩す他国選手の登場も、そう遠い話ではないかもしれません。
男子シングルスでは苦汁を飲まされた日本勢ですが、女子では初代表の高橋乃綾選手が気を吐きます。
昨年は所属チーム「どんぐり北広島」で半谷美咲選手とのペアで、国内主要インドアタイトルを総なめにした21歳伸び盛りのサウスポー。
得意のインドアに近いサーフェイスや、女子では珍しいダブルフォワードも器用にこなす技術の高さで快進撃を続けます。
準々決勝では2015世界選手権、2016アジア選手権のシングルス女王でもある韓国のエース、キム・ジヨン選手をファイナルで撃破。
続く準決勝でも中国選手をストレートで下すと、勢いそのままに決勝の鄭竹玲戦でも強気のプレーで押し切ります。
そして歓喜の瞬間へ。
日本勢の女子シングルスとしては大会史上初の決勝進出にして、見事日本チームに最初の金メダルをもたらしてくれました。
嬉しい、嬉しいアジア大会での金メダルに、笑顔が弾けます。
続くミックスダブルスと国別対抗に向けて、大きく弾みをつけてくれました。
高橋選手、おめでとうございます!
アジアの頂点を決める熱戦はまだまだ続きます。
頑張れ、ニッポン!!
2018アジア競技大会ソフトテニス競技 注目動画
女子シングルス/決勝
高橋 乃綾(JPN)対 鄭 竹玲(TPE)
男子シングルス/決勝
キム・ジウン(KOR)対 Alexander Elbert Sie(INA)
https://youtu.be/oxIz_6DLHnQ
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