ついにソフトテニス界に新たな歴史が刻まれました。
いや、正確にいえばこれから新しい歴史が始まります。
競技発祥から120年以上に渡る日本ソフトテニスの歴史において、史上初となるプロ選手が生まれました。
先月発売されたソフトテニス・マガジン5月号の誌面上でもすでに、船水颯人選手がソフトテニスのプロプレイヤーとして活動していくことが宣言されていました。
ソフトテニス界において、いまだかつてなかったビッグニュース。
この注目すべき発表を機に、多くのソフトテニスファンや関係者のあいだでも船水選手の去就や具体的な活動内容に関心が集まっていました。
「ソフトテニスでメシを食う!!」と銘打っている私が、当然ながらこの話題に反応しないはずがありません。
今回船水颯人選手の契約先となるヨネックスからのプレスリリースを目にして、すべての予定をキャンセルしてその記者会見の取材に伺いました。
会場は新橋に昨年12月オープンした「YONEX TOKYO SHOWROOM」です。
YONEX TOKYO SHOWROOM(ヨネックス 東京ショールーム)
発表によれば、今回の契約はヨネックス所属契約を含む用具使用契約とのこと。
ここで疑問に思う方も多いかもしれません。
実業団選手とプロ選手では何が違うのか?
実業団というのはあくまでも企業スポーツなので、その会社の社員を指します。
もちろん会社によって正社員であったり、雇用期間に定めのある契約社員だったりとさまざまかと思いますが、あくまで社員が自分の会社のチームに所属している状態です。
たとえば実業団のトップチームであるNTT西日本の選手たちも、NTTの社員として仕事をしながら平日の仕事終わりや休日を使って練習や試合に臨んでいます。
もちろんヨネックスの実業団選手たちにおいてもそれは同じです。
プロ契約ということはつまり、ヨネックスの社員として働くわけではなくあくまでスポンサーとしてお金を出してもらいながら、ソフトテニス選手として競技に専念するということになります。
ソフトテニス以外の仕事をしながら競技者としてソフトテニスをするのと、職業としてソフトテニス競技に取り組むのでは当然意味合いは大きく異なります。
ソフトテニス競技では前例のない今回のプロ宣言ですが、他の競技ではさまざまな先例があります。
たとえば体操の内村航平選手。
日体大を卒業後、コナミスポーツクラブに入社して約5年半活動していました。
そこから2016年に同社を退職して、体操選手としては日本初となるプロへ転向。
内村航平オフィシャルウェブサイト
また別の競技では、公務員ランナーとしておなじみのマラソン川内優輝選手も今年3月、32歳にして埼玉県庁を退職し、プロランナーとしての活動をスタートし注目を集めています。
この二人ともすでに選手としての実績、知名度も確立したうえで、そこからまた安定した地位を捨てて競技に懸けるという点で共通しています。
ほかにも野球やサッカーなどのメジャースポーツは別として、プロリーグやプロチームが存在しない競技でも、国内外でプロとして活動している選手というのは存在します。
マイナー競技でも、スター選手の登場によってその競技がクローズアップされ、競技人口の増加や発展につながるケースも少なくありません。
ただ一方で、どの競技でもプロといっても実際にそれだけで生活を続けていける選手は、ごく一握りです。
プロ野球選手やJリーガーであっても、選手寿命としては数年という人がほとんどですし、それ以前に2軍生活のまま陽の目を見ることなく引退する選手だっています。
硬式テニスでさえ、実際にプロとして食べていけるのは国内ランキングでも上位にいる一部の選手に限られると聞きます。
テニスやゴルフなどのメジャースポーツであればレッスンプロとしての道もありますが、獲得賞金やスポンサー収入だけで生活していくというのは至難の業です。
プロというと年収数千万円とか数億円の有名スポーツ選手をイメージしてしまいがちですが、それはレアケースです。
誰もが錦織圭や大坂なおみになれるわけではありません。
オリンピック種目ではないソフトテニスにおいては、その壁はより険しいものになると予想されますが、それでもやはりこの船水颯人という実力とスター性を兼ね備えたソフトテニス界100年に一人の逸材には期待せざるを得ません。
記者会見はメディアや関係者だけでなく、一般の方でも来場できるように開催していただきました。
平日開催ということで行きたくても行けないという方も全国に大勢いらっしゃったことと思います。
会見の様子はこのブログの最後に動画レポートでお届けします。
「ソフトテニスに対する考え方、価値観を変えたい。自分の可能性とソフトテニス競技の可能性に挑戦したい」
そう力強く語ってくれた船水颯人選手。
プロ選手として、今まで以上に勝って当たり前。
負ければ批難にさらされるどころか、契約打ち切りということもあるはずです。
たとえ船水選手といえども、シビアなプロの世界で開拓者として道なき道を進むのは決して容易ではありません。
それでもこの挑戦は、彼の人生にとってはもちろんのこと、それ以上にソフトテニス界全体にとっても大きな意味があります。
連盟関係者やメディア関係者だけでなく、メーカー、ショップ、選手、指導者、ファン、ソフトテニスを取りまくあらゆる人たちで応援し、盛り上げていかなければなりません。
船水颯人選手がプロとしての道を切り開くことは、間違いなくソフトテニスに携わるすべての人にとってハッピーなことです。
プロが当たり前になれば、その恩恵は選手ばかりでなくスクールやレッスンコーチ、スポーツトレーナー、グッズ販売、イベント興行、メディアなど周辺ビジネスにも波及して、競技全体が発展します。
会見のなかで船水選手は、
「ジュニアの頃に当時のトップ選手から夢を与えてもらった。今度は自分が夢を与える番」
そうも語っていました。
船水選手に憧れて、いずれそれを超える選手たちがきっと生まれてくるはず。
しかし、彼の挑戦に夢や希望を与えてもらっているのは、なにも子供たちばかりではありません。
私のようなおっさんでも、とてつもない勇気をもらっています。
「ソフトテニスでメシを食う」
私がこのブログを書き始めた頃には想像もつかなかったかたちで、このタイトルが面白味を失うことを誰よりも願っています。
きっと、Jリーグが発足するよりも以前の日本リーグ時代であれば、「サッカーで飯を食う」ということを公言することでさえ、少なからずはばかられたはずです。
でも今はたくさんの子供たちが「サッカーで飯を食う」ことを夢見ていたり、多くのサッカー関係者がサッカーに携わる仕事で生活しています。
サッカーとまではいかなくても、いつの日かソフトテニスもそれに近づいていくことを夢見て、私も船水選手とはまた違った立場で、コートの外から心血をそそいで一層競技を盛り上げていきたいと思います。
(もちろん、コート上では目一杯ソフトテニスを楽しませていただきますので悪しからず)
船水颯人選手、マジで応援しています。
みなさんもぜひ、目一杯応援してください!!
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